性について読むvol3 -自主規制について-

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性について読む-ブックマークページはこちらから。630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

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見えない抑圧

630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f前回は日本が性のタブーのない国であったということを書きました。今回は現代における性表現の規制について書こうと思います。実は、日本は性の表現を全くもって悪いこと!といったような法律は、それほどまで抑制されたものはありません。あるのは主に、憲法175条というものなのですが、内容自体はとても曖昧で、

630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3fわいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする(第1項)。」630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

と言うもの。この法律に反するかどうかはほぼ「わいせつかどうか」という部分にかけられているわけですが、その「わいせつかどうか」の判断は最高裁が下すことになっています。なぜ細かい規定ができないかというと、時代によって「わいせつ」の考え方が違うためというのが理由の一つとして考えられます。しかし過去の事件から下した判決を基準に「わいせつか否か」を決めることが多いようです。(注1*) わいせつの基準が曖昧だからこそ、過去の判例が参考になるわけですが、その判例が多くなればなるほど、基準も苦しい世界になるわけです。そういった世界で何が行われるかというと、判断が下される前に、自ら規制してこれ以上の規制を逃れようという、自主規制スタイルが生まれます。「これもいけないんじゃないか、あれもいけないんじゃないか」と前もってする自主規制は、法が決めたわけでもないのに、一般的通念が表現を自ら規制するという不思議な世界に陥っているわけです。法は「わいせつ」なものがあるという存在を認めているだけであり、そのわいせつは何なのかを判断するものがその時代の社会通念(その時代の偏見的な常識)です。なので、表現者が何に怯えているのかというと、「この表現はいけないんじゃいの?」と他者に思われてしまう事であり、その考えは自分自身の中にも存在します。なんだかよく分からないけれど、見えない何か(社会通念)に怯え、自ら規制して守りに入らないといけない状態になっているわけです。

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ろくでなし子事件

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今まさに性表現で起きている事件がろくでなし子事件。彼女は2回にわたってわいせつの容疑で逮捕されているのですが、1つは自分の女性器の3Dデータを使用した作品を作るためにクラウドファンディングで資金を募集し、その資金提供の見返りとして自分の女性器の3Dデータを配布したというもの。2つ目はデコまんという女性器の作品をアダルトショップで展示したこと。(2017年5月13日二審判決で一部無罪)ここで問わられているのは、ろくでなし子さんの作品はわいせつかわいせつではないかという話。間違ってはいけないのは女性器がアートかわいせつかという話にすりかえられないことですね。女性器はアートかわいせつかどうこうよりも女性についているものなので、それをどうこう争うのは変な話です。もっとも個人的な意見ですが女性器は造形的にアワビみたいで特に好きな感情はない。女性器を作品として使う意味は女性のシンボリックなものとして表現するというところに意味があるのですから。そして日本では現状女性器がどういうものとして認知されているのかというのを見て取れる面白い事件でもあります。(参照記事:http://ironna.jp/article/3266

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モザイクは自主規制を強調している630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

自主規制すれば、社会通念から逃れられからいいことと思っていませんか?それは間違いで、自主規制は規制部分を強調してしまう効果もあるのです。例えば赤いリンゴの映った写真があったとします。普通にそのまま公に見せれば特に問題はありません。しかしどの人も一斉にリンゴにモザイクをかけたとします。それは「見せてはいけないもの」に変わり、規制すべき一つに変わっていくのです。春画の世界に戻ってみましょう。昔は性器を黒い四角で塗りつぶすこともなく、そのままの絵で男女ともに楽しめるものでした。しかしSNSを見てみましょう。乳首や性器には何らかの方法で、そこは塗りつぶされ、「NG」とされています。自主規制はむしろ「今隠しているコレは、規制しなくてはならないモノ」だとと強調してしまうのです。

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SNS内とモザイク630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

私が懸念していることは法律ではなくむしろ、SNSが作り出した規制部分です。今までであればR18サイトとしてエントランス部分を規制することにより、見てはいけないものを制限できる(表現を緩和して公開することができる)、もしくは自ら見ないという選択ができる、といったことがある程度はできたと思います。しかしINSTAGRAMなどといったSNSという、拡散しやすく、若いユーザーも使用しているツールは、ちょっとしたことでもアウト(一般ユーザーがちょっとでもいけないと思ったら通告、アウトな世界)になりかねない世界であり、その状況を嫌が応にも見てしまう危険性があります。INSTAGRAM投稿者でアート写真だけど、ちょっと乳首見えたら警告されてしまうため、投稿者は何をしたかというと、乳首にモザイクをかけ始めました。前にも書いた通り、自主規制(モザイク表現)は規制していることを主張するツールでもあるため、乳首=ダメなんだな、ということが若い人にダイレクトに見えてしまうわけです。例えば性についてポジティブな考え方を持ち、そこに関してアプローチをしているアーティスト集団がいるとしましょう。しかし、セクシャルな画像をSNSにアップすれば誰かが通報し、消される。そんな現状にこのアーティストは何をしでかしたかというと、自ら写真にハートスタンプを貼っちゃうわけですね。(しかしこれはハートの部分をヤラシイモノと見せるために非常に効果的な技でもあります。)これは性の知識が曖昧な人にとっても、性の表現にとっても、今後の性の社会通念が大きく変わってしまう第一歩になってしまう可能があります。法というよりも、SNSツールのアウト基準が、一般的な性の社会的通念に大きく響く可能性が強いのではないかと思っています。

 

 

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18指定の本当の意味630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

アダルト業界で見るR18の意味。18歳以上は見てはいけない、見なければ良い子に育つという意味というわけではありません。18歳になる頃にはちゃんとした性に対する知識が整っていると判断される基準という意味です。例えば性に対するちゃんとした知識が整っている人が モザイクにリンゴがかかった写真をしても、なんかリンゴにモザイクかかってるくらいに思うでしょう。しかし、性の知識が全くない無知の人がリンゴにモザイクがかかった写真を見れば、「なんかリンゴはとにかく悪いもので、見てはいけないものなんだ」となりかねないのかもしれません。雑な例を出してしまいましたが、SNSに乳首にモザイクをかけた写真をアップして性の知識を持っていない人が見たら、乳首をどういうものとしてみるのでしょうか。つまりやりすぎた自主規制はさらなる規制を招く結果になる可能性があるとも考えられます。大事なのは規制をかけることではなく、ちゃんとした知識を教えてあげること、その上での規制をすることなのではないでしょうか。逆に言えば性の知識を存分に理解していれば、R18以上のラインにモザイクは必要になるのでしょうか。なかなか難しいラインではあるのかもしれません。

 

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自主規制から生まれた規制の種類とその進化630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

自主規制が進めば自主規制のあり方も変わってきます。自主規制の方法も様々で、四角を限りなく細くしてできる限り見せるスタイルや全体的にモヤをかけた性器抹消スタイル。また色も白い四角黒い四角、バリエーションが豊富な箇所では薔薇とか落ち葉とかそいったものをあります。表現自体で意味を持たせることもできるので、例えば卑猥な感じをもたせたかったら黒い四角でできる限り細くして性器をみせたり、逆にピュアなロマンチスト系なら白い靄にしてほわっとないものにしたりします。630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

また面白いのが、若い子も簡単に見れてしまいやすい電子漫画です。BL漫画は特に、単行本のモザイクの表現より電子漫画の方が性器にモヤが大きくなり、むしろ削りすぎて性器のないエイリアン状態になっています。というのも、これには黒い四角で強く卑猥という意識を持たせることを少なくすると同時に、そこはないものと見せることができる表現ではありますが、(TLは昔からその部分を美化しすぎて性器自体ないものとしてみる傾向が強い)このことに対して、自主規制表現が己の美学に反するかどうかは、人によって回答が変わってきます。私の好きな漫画家で座裏屋蘭丸先生(主にBLストーリー)という方がいるのですが、この作者さんはもともとは同人でR18と規制をかけ、自主規制の少ない世界で表現していた人です。いうなれば性器というものに愛を持っている方で、シワの一つ一つまで描き上げる情熱高い人なのですが、ある日を機に、公式的に作品を出版することになりました。しかし、出版別に規制の強さは変わるとはいえ、単行本ではその一つ一つのシワが白いシルエットになり、電子漫画ならなおさら性器なんてこの世に存在してますっけ的な宇宙人スタイルになるわけですから、私の想像ではありますが、こういった自主規制表現は作者の美学に反するものではなかったのでしょうか。宇宙人の作品を描くのか?人間として人間らしい行為を描き続けのか?(性器が作者にとって意味のあるのもなのか?)作者がどういうことをしたのかというと、コヨーテという作品でアングルで性器を隠し、ほぼノン自主規制スタイルをとったのです。

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規制を有効活用

630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f大ぴらにできない規制社会、あえて規制することでできる性表現方法は面白い形で存在します。座裏屋蘭丸先生のもう一つの方法として、別作品で18禁レーベルの出版媒体で本を出したということ。BL界は非常に面白いラインの世界で、性行為が多いながら、全年齢対象とした年齢の規制のないジャンルです。その現状を維持するために、年々自主規制が濃くなっているわけではありますが、あえてもういっその事18レーベルです!と言い張ったレーベルであれば、自主規制を緩和することができ、最低限の自主規制で表現することができます。簡単に言うと、作者の丹精込めた性器のシワを拝むことができるわけです。また、去年展示会を行った春画の展示では、18歳以下入場禁止という規制をかけ、ありのままの春画を展示したり、規制の中で表現を緩ませる方法はそれなりに考えられそうです。630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

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ここで以前紹介した、LAブランドのECKHAUSELATTA SS17 LOOK を見てみましょう。セクシャルを美しいものとして表現した斬新なLOOKではありますが、ネットの世界にある規制により、自ずとその部分を規制しなくてはなない。少し残念なのがSNSで公開されたLOOKとHPで公開されたLOOK(OVER18以上のENTER設定がある)があるが特に差がなかった部分。ネットのルックだから難しい部分はあるのかもれません。そこは隠すべきか隠さないべきか。ある意味とても面白いLOOKです。 630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

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不思議な会議

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また東京には青少年保護育成条例というものがありま。つまりは18歳以下の子に指定のモノを見せてはならないという条例があり、漫画や映画でいうならばこの本や映画は全年齢で売っていいものなのかどうなのか(健全なものかどうか)を決める謎の会議が毎週開かれており、その議事録がまぁ一般の方も見れちゃうのです。どんな内容かというと、3冊くらいの作品が用意されていて、その作品がどこの出版か、どんな性表現をしているか、どんなストーリーなのかを発表し、それに対して健全か不健全かを判断するといったことをしています。「この絵は可愛いからオッケーすよね?ストーリー重視だし」って言ったら偉そうな人が「いやでもヤってるからアウト」みたいな会話とか「性器はっきり描かれてるから青年に手に取られたらダメじゃない?」「グジュグジュとか卑猥な表現ダメじゃない?」とかそういう会話なのですが、いやはや、なんとも面白い会話ですね。指定が存在すること自体は特に問題ではないのですが、全年齢の表現が厳重すぎるものが生まれてしまう可能性はあります。この勧告を逃れるために、授乳シーンを自主規制した出版会社もあるわけですから。結構面白い会議なのでおヒマな人は是非読んでください

INDEX→http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/singi/kenzensin/

議事録→http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pdf/09_singi/680/680gijiroku.pdf 

 

630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3fスクリーンショット 2017-05-28 午後5.06.47630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3fそれに対して、性表現について、同人誌(自主出版)のイベント主催者赤ブーブー通信社が掲載するR18について考えようページもまた面白いので参考がてら貼っておきます。単に性表現を自主規制させるのではなく、それは本当に規制すべきものなのかも考えて欲しいという文面があります。http://www.akaboo.jp/neo/event/p1296.html

※赤ブーブー通信社が発行しているR18読本はわかりやすくてよかったです。630b76a74e427fd821f25e5bc121ec3f

性のタブーのない日本、そして今の自主規制世界を通して、あなたは何を考えるでしょうか。いけないと自身で思っているのに表現したい、でも隠さないといけない気がするから隠している。規制は時に息苦しくもあるものです。それによって生まれた日本独特の耽美なカルチャーも存在します。しかしながら性はそれ以前に性は生理的な世界だったと思います。ネットによる規制ど強度から始まり、”正”から始まるこれがいけない、あれがいけないという現状、今後の性表現がどう進んでいくのかは皆さんも気になるものだと思います。他の性についての記事がきになる方は、是非『性について読む-ブックマークページ』をみてください!

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*1:チャタレイ事件以降、(1)いたずらに性欲を興奮または刺激すること(2)普通人の正常な性的しゅう恥心を害すること(3)善良な性的道義観念に反すること。この3要件の判断方法について、最高裁は、その時々の「社会通念」にしたがって、裁判官が行うとしている。

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※専門的な文章ではないため、正確な内容ではないとある文面がありましたらお知らせただけると助かります。

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