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CULTURE

2019.01.29

“辞職”を迎えるぼくのりりっくのぼうよみ最期の姿

“辞職”を迎えるぼくのりりっくのぼうよみ最期の姿
2019年1月31日をもって、ぼのりりっくのぼうよみが終わりを迎える。ラストのライヴが「葬式」というのも彼らしい。幾度となく世のなかをざわつかせてきた彼だが、今回のインタビューでも最初からやってくれている。

NYLON.JPでは誌面に掲載中の内容を一部公開。全貌は昨日発売されたNYLON JAPAN 3月号で楽しんでほしい。


いきなり本題になりますが……今、辞職を決めた理由は?
そうですね……理由はいろいろあるんですけど。“ウケる”からですね。
“ウケる”というのは“笑える”という意味の?
そういう“ウケる”です。何かをふと、辞めたくなる瞬間ってあるじゃないですか。例えば、僕、高校の頃、家から学校への距離が遠かったのですが、朝のホームで電車を待っている時に、ふと『何してるのかな俺』みたいな気持ちになったりしてしまうんですよ。学校のある駅では降りずにこのまま乗っていっちゃおうかなとか考えてしまったり……。実際もよくやっていたんですけどね(笑)。そういう気持ちって誰しもがあると思うんです。僕の今の立場は、良くも悪くも人の目につくようになったので、辞職をすればウケるかなと思ったんです。
それで“ウケる”って理由に繋がったんですね。辞めることを辞職っていう言い方をするのも独特だなと思ったんですが。
卒業、活動休止、引退とか、辞める時にはいろいろな言い方があると思うんですけど、辞職って言い方が僕のなかでの『ぼくのりりっくのぼうよみ(以下、ぼくりり)』のとらえ方を象徴しているなと思って。僕にとって『ぼくりり』はひとつの職業なんです。中学生の頃からインターネットで音楽をやってきましたが(この時は紫外線という別の名前でやっていました。ずっと名前が変ですね(笑))、その時も学校で過ごしている本名の自分と、紫外線という名前の自分がいるみたいな……。そういう、自分を何人か持つということがデフォルトだったので。

2015年の12月にメジャーデビューをしてからもう3年になるんですけど、2年目くらいから『ぼくりり』が僕自身をのっとってきてしまっているような、ワーカホリックのなかの定番というか、自分がその概念を同一化させてしまったのではないかと思って。そこから切り離して、自分を引き戻そうという意味で、辞職という言い方をしました。
辞めるきっかけとなる出来事があったわけではないのですか?
うーん。もともと、僕と『ぼくりり』というものが一体化するっていう現象が重症化していった時は、すごく辛かったですね。今振り返ってみるとなのですが、僕、『ぼくりり』を始める上で、こうありたいとか、こうするべきだと、この存在の意味を掘り下げる作業を全然していなかったんです。売れたほうが良いんじゃないかなとか、でもCDは嫌いだなとかいう、なんとなくみんなが幸せになるような『ぼくりり』で生きていこうと考えてしまう。MCをもっとやってほしい人もいれば、曲をもっとやってほしいって人もいるじゃないですか。そういう場面なのに、ぬるっとやっていたので、『どうやればいいんだ?』と考えてしまって。お客さんはお金を払ってきているのに……と、悩んでるうちにうつ病みたいになり。喜ぶ人と悲しむ人の双方が発生してしまうなという場面になっても、ふんわりと“みんなが良いと思うものを作りたい”っていう目標だけでやっていると、フリーズしちゃうんですよね。そんなことが、去年の春くらいにあり、これはやばい状態になっているなと実感したんです。

だから、きっかけは何かと聞かれたら、僕と『ぼくりり』が非常に一体化しているというのを強く認識して危機感を覚えて、いろいろ考え始めたこのタイミングなのかなと。僕は本来、結構インターネットでいろんな人をおちょくって楽しんでいたタイプ。インターネットヤンキーみたいなことをやっていたので(笑)。そのマインドを、メジャーデビューをする時に隠せるくらいの分別はあったのですが、隠していたためにさっき言ったような困った事態になってしまったんですよね。正直、僕にとって『ぼくりり』としての3年間は、大失敗だったなと思っているんです。目標がなかった時点でプロジェクトとしては転んでいたというか……
辞職を発表してから、世間からは様々な反応があったと思うのですが、ぼくりりさんの考えていたとおりの反応というか、最後に向けて理想の進み方ですか?
理想というか、最近は、さっきお話しした1年前には目標もなくてふんわりしていたという頃とはまた別の気持ちで。もうちょっと純粋な気持ちの延長でやっているというか、これがすごくやってみたいからとりあえずやってみよう、という意識のところで動いているんです。こうやるとこうなるんだということばかりで全てを新鮮に思っています。そのなかで理想のとおりにいったらうれしいし、そうじゃなくても新しい発見がまたうれしい。
少し実験的な要素も、今の気持ちにはあるということ?
あ! それは非常に強いですね。この辞める一連の作業自体が今まででいちばん新しいことをやっているなと感じられます。
テレビで辞めることを発表した際のインタビューで「僕は自由になりたいです」と言っていたのを拝見したのですが、自身が描く自由ってどんなものですか?
僕の場合は、明らかにいろいろな呪いを背負ってきているなっていうのが体感としてあって。その気持ちが漠然と自分のもとにあるというか、なぜかわからないけど日本はこの先良くなくなっていくとか、どんどん紙の雑誌はなくなっていくとか、じゃあこの後何がくるんですか、みたいな。なんとなくですが、僕たちはみんな、不幸になっていくっていうこの空気感をある程度根底に抱えているのではないかなと。このことに対して、本質的にどうしたいかと考えたりもしないから、なんとなくこの不幸そうな感じでいることに反対に安心してしまっているのかなと。他人と自分をいたずらに比べて、自分のほうが劣っているのではないかと思ったり、場の空気を気にしてしまったり。マナーから外れるということではなく、自分を支配するもの全てから自由になりたいですね。そういう抑圧がない状態を僕は自由だと感じます。
デビューをして3年間過ごしてきたなかで、楽曲についても教えてほしいのですが、デビュー前と現在とで変わったなと思う点などはありますか。
デビューしたから何かが変わったとかではなく、僕は今まで出した全4枚のアルバムごとに全く違った手法を試していて、その時々で能力を獲得していくことができたと思っています。最後の4枚目でそれが結実したイメージですね。

ファーストは自分の価値観。自分がかっこいいと思うのでこれをやりますということを全部やり、セカンドはアルバム全体でひとつのストーリーを作りあげることをやってみたくて、大きな絵に向けてジグソーパズルの小さなピースをうめていくような感覚で曲を作ったりしました。サードは不変のものを目指しました。いわゆる既存のフォーマットが地にあり、壮大なバラードで相手のことを歌う曲ってたくさんあるじゃないですか、それはありきたりなものではなくて、ひとつのジャンルなんですよね。みんながその縛りのなかで勝負をしている。『J-POPって“翼”とか言いすぎ~』みたいに言うやつは何もわかってないなって思ってしまうんですよね。なぜならみんなそういうルールでやっているので。俳句を見た時に『五・七・五ばっかじゃん』と言っているようなものだなと。いろいろな人達が通ってきた既存のジャンルに、真っ向から挑むのですがそこに新しいものを加えてアレンジしていくのではなく、その人達と同じところに直球で勝負することをやりました。つまりこのアルバムは、いつもの僕とは切り離した作品ってことだったんですよね。より多くの人を巻き込んで匿名性をあげる作りにしてみました。

それらを統合して完成したのが4枚目の『没落』というアルバム。自分の価値観で作りつつ、『ぼくりり』というひとりの人間が没落していくストーリーを描いていて、なおかつそれは適度に抽象化されていて、普遍性も持っている、そんな感じ。ようは、1枚目から3枚目に培った能力を4枚目で頑張って使ってみました!
制作してきた自身の曲のなかで、特に思い出に残っている歌詞はありますか?
『人間辞職』って曲を最近作ったんですけど、その曲で、『人間なんてオワコンなんだよ』という歌詞が出てくるんです。オワコンっていうのは終わっているコンテンツという意味。もうかなり知られている言葉だと思うんですが、ネットスラングからきた言葉なのでそういうものをあまり使わないようにしようみたいなルールが今までは自分のなかにあったんです。抽象的であることを追い求めて、それが自分のなかで大事なことという基準だったんですけど、今はそんなことどうでもいいというか、誰かの価値観に何か大きなショックを与えることのほうがすごく大事。僕の具体的な言葉は絶対使いたくないというこだわりは必要ないなと。あまり道具とか選ばずにやれたらなと振り切れたきっかけでもある一節ですね。昔だったらもっと表現上美しい言葉にしたりして、そんなふうには書かなかったかなと。違和感を含めてこれが僕らしいなと思ったんですよね。
ついに今月、最後のライヴ『葬式』を迎えますが、演出などで計画していることはありますか?
そうですね。葬式がいちばん大事なので。今まで聴いてくれた人に、映画なり小説なりそういうものからは味わったことのない、名前のついていない感情を味わせたいなと思っています。みんなに感謝して引退をしていくんだね、さよなら~みたいな演出には違和感というか、吐き気がするので(笑)。今後どうするかとか未来の話ではなく、今展開されている一瞬一瞬、あるいはそこに繋がってきた過去を回想すること以外はあまりさせたくないというか。圧倒的に破壊して葬り去る葬式にしたいなと思っています。
ぼくのりりっくのぼうよみ
シンガーソングライター。作詞・作曲家、音楽プロデューサー、執筆家としても活動。高校生の時に投稿した動画が人気となり、2015年12月、高校3年生の時に1stアルバム『hollow world』でメジャーデビュー。3年間で4枚のアルバムをリリースし、そして2018年9月『NEWS ZERO』で辞職コメントを発表。ラストアルバム『没落』、ベストアルバム『人間』を世に送り出し、2019年1月のライヴを最後に活動終了。

INFO

ぼくのりりっくのぼうよみ最後のライヴ『通夜・葬式』が1月29日(火)東京昭和女子大学人見記念講堂にて開催される。
bokuriri.com/live/

MODEL: BOKUNORIRIKKUNOBOUYOMI
PHOTOGRAPHY: GENKI ITO
STYLING: HIDEYUKI KANEMITSU
HAIR&MAKEUP: AYUMI HIGUCHI(CALM)
INTERVIEW: HITOMI TERAOKA
EDIT: TAKASHI TOGAWA, SHOKO YAMAMOTO
DESIGN: AKIKO MIYASAKA











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