CULTURE
自分らしく生きた人『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』
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『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』
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ああ、なんて心が安らぐ音色なのだろう──。 “魂のピアニスト”と呼ばれるフジコ・ヘミングの奏でるピアノは、優しくて、温かくて、傷ついたところをそっと包み込んで癒してくれるような、そんな不思議な力があります。
この映画は、2024年4月に92歳で亡くなったフジコ・ヘミングのドキュメンタリー。80代後半〜90代の4年間の彼女を追いかけながら、ベルリンで生まれたこと、幼少期にピアノを始めたきっかけ、ドイツへの留学、右の聴力を失ったこと、60代後半で大きく注目されたことなど、ピアニストとしてどんな人生を歩んできたのかが映し出されます。彼女が奏でるピアノと共に──。
90年という歳月を約2時間で追いかける、興味深いエピソードばかりですが、やはり驚くのはCDデビューをしたのが67歳だったことでしょうか。
人は、何かやりたいことがあったとしても「もう何歳だから……」と、年齢が邪魔をすることもあります。でも、フジコ・ヘミングの人生を見ていると、「何歳だから……」なんて言えなくなる、言わなくなる。短いようで長い、長いようで短い人生を精一杯生きたくなるのです。
もちろん彼女のように人生を捧げるものをすべての人が持ち合わせているわけではないですが、それでも、90歳を超えてもなお精力的にコンサートに挑むなど諦めることをしない姿は、人生のお手本にしたくなります。
この映画の中で流れる曲は、「ラ・カンパネラ」「夜想曲(ノクターン)第2番」「英雄ポロネーズ」「月の光」「アヴェ・マリア」など、誰もが一度は聴いたことのある名曲ばかりですが、フジコ・ヘミングのピアノは、やはり特別です。知っているのにこんなに感動するの?と、そのピアノの音色に魅了されてしまう。
また、ピアノだけではなく、フジコ・ヘミングの纏う洋服やアクセサリー、自ら描く絵画、サンタモニカやパリ、東京での暮らしも素敵で。そのひとつひとつから彼女らしさを感じます。そして、人生とは、愛とは、優しさとはなんだろうと考えたくもなる、そういう映画です。
| ピアノっていいな度 |
★★★★★
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| 自分らしく生きる度 |
★★★★☆
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| アーティストいろいろ度 |
★★★★☆
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監督・構成・編集
小松莊一良
出演・音楽
フジコ・ヘミング
配給
東映ビデオ
10月18日(金)新宿ピカデリーほかにて全国公開中
Ⓒ2024「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」フィルムパートナーズ
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