HOME > It's Work Time vol.11 film director Kento Yamada 4/4

日本の映像産業をもっと豊かにしたい
新しい文化を見つける入り口作りが必要

−今興味があることはなんですか?

映像でいったら映画にはいちばん興味があるし、短編でも長編でもとにかくやりたいと思っていて、今動いているのでそのうちやると思います。これも新しい畑で、MVのセオリーが通用しないと思うし、勉強する必要があるから慎重に頑張りたいです。映像以外だったら、救命救急士の資格。最近ちょっと調べているんですよね。救命救急士って最低でも2年くらい学校に通うか、消防士にならないといけないので難しいですけど、もうちょっとライトなAEDの使い方や人工呼吸くらいの救命措置技能から始めようかと考えています。

−救命救急士に興味を持た理由は?

これは普通に生きていて人を救えたらいいなって思っただけです。それになるのはものすごい大変だし、責任感のあることだから別になめているわけでは全然なくて。自分の現場でも危険なことはなるべく避けているから怪我とかもないけど、そういうふうになり得ることもあるかもしれないじゃないですか。例えば炎天下で長時間撮影する時に、対応できるスキルや素養があるだけでも大事だし、今からできることの1つかなと思って。もちろんそのスキルを使わないのがベストなんですけど。今から医者になるのは無理だけど、自分もそういう時に力になれたらいいなって思っているので、興味はあります。

−ご自身が思う自分の性格はなんだと思いますか?

真面目だと思います(笑)。でもよく「変」と言われるんですが、自分のなかでは「変かな?」って思いますね(笑)。基本的には真面目なところがあるとは思っていて、そうでないと自分のことを信用できないというか、「撮影準備をこんだけしたんだから大丈夫でしょう」って安心したい派なんです。スポ根みたいなところもあって、スポーツをやっていた頃も「練習の8割しか試合で出せない」ってよくに言われていたので、120%練習してようやく試合で100%出せると。何事もそうだと思います。そういうマインドがずっと続いているから撮影に臨むまでの準備はめちゃくちゃしているし、すごく丁寧に考えています。あとは現場である程度臨機応変に動きたいので、感覚的なところも大事にしていますね。

−今後MVを手掛けたいアーティストはいますか?

やっぱり本当に自分がずっと聴いているアーティストはいつかやりたいっていう欲はありますね。レディオヘッドとかアークティックモンキーズ、ケミカルブラザーズとかは正直やりたいです。いちばんはレディオヘッドですね。いろんなジャンルを聴いていますけど、今でもずっと聴いているし、今でも本当にかっこいいと思うし、自分が映像作家という立場になったから一緒に物を作れたらそんな幸せなことはないなって思います。

−今までお会いした人のなかでいちばん衝撃だった人はいますか?

みなさん衝撃的といえば衝撃でした(笑)。まずは宇多田さんかな。ちゃんと映像を始めてから2年くらいで、当時はまだメジャーなアーティストを本当にやったことがなかったので、最初にお会いした時は「本当に実在するんだ……」という衝撃はありました。でも初めて会う人は緊張感を持って会いますね。僕自身最初からフランクな感じではないので、丁寧にいっていると思います。

−今後の展望を教えてください。

この先5年くらいで考えているのは、まず日本の映像産業をもっと豊かにしたいです。今は単純に映像が消費されるものになってきているような気がするんです。渋谷のスクランブル交差点にも映像がたくさんあるけど、いい映像が流れたとしても見ている人達はそれだけで終わってしまうんですよ。適当に見流しているし、本当に消費しているだけというか。仮に「このCMいいな」って思っても「これを作った監督は誰だろう」とはならないし、それって文化的な発展に繋がらないんじゃないかとも思うんです。現状として音楽とか映画とかも含めてお金もあまりないし、お金が全てじゃないですけど、本当にいいものに投資できる産業的な仕組みがあったほうがいいと思います。そのために自分がまず5年くらいのスパンでできることとして、とにかく入り口作りみたいなことを考えています。日本人は自分からディグする能力が乏しい民族だと思っていて。そのために見つける入り口をいっぱい作ってあげることは大事かなと思います。例えば、嵐さんとかGLAYさんとか宇多田さんのような誰もが知っているようなアーティストのファンが、MVを見て「この映像すごいな、監督は誰なんだろう」って調べてくれた時に、yahyelとかまだあまり知られていないようなアーティストを見つけて「この人これも撮っているんだ」って違う音楽に繋がっていく入り口にもなるだろうし、究極的にはこれが現代的な文化の発展でありカルチャーの形成の第一歩だと思います。僕が「マスとコアどちらもやりたい」って言ったのはこういうことなんです。マスとコアは両極端なようでひとつの円のような実は両隣だと思っていて、「いいものはいいじゃん」という風潮になっていけばいいなと思います。だからMVもやるし、CMもやるし、映画もやってみたい。それで全部がそこに繋がったら面白いですよね。僕1人の力でそんな大きいものを動かせるかはわからないですけど、ここ5年くらいで発展させたいですね。

−今注目している若手映像クリエイターはいますか?

自分より歳下ですごいなって思うのはPennacky( @pennacky )かな。僕も知り合いですごくいい人なんですけど、1人でDIYっぽくやっているような人で、独創的で面白い作品が多いし、彼にしかないものを作っている感じがしますね。

−では、最後にNYLON読者、また映像クリエイターを目指している人達に向けてメッセージをお願いします。

やりたいことがあった時にやるのが簡単な時代になったなと思います。昔は映像の編集って超特殊技術すぎて本当に勉強したい師匠のもとで何年か修行しないとわからないとかあったんですけど、今はもうそのハードルがどんどん下がっていって、やりたいと思ったらいつでもやれますよね。なので、どういう目的でやっているのかということが大事。今は目的が見えない人が多いように感じます。映像の仕事をなぜしているのかは、かっこいい仕事がしたいでもいいと思うし、家族を養うためでも美しいと思うし理由はなんでもいいんですけど、人と比べるよりも自分の目的に対して自分は努力できているかということはいかなる仕事でも大事なんです。それでもいろんなことを変えていくのは時間がかかりますが、夢のある仕事だなというふうにはしていきたい。小学校の将来の夢ランキングに医者、サッカー選手、最近だとYouTuberとかいろいろありますけど、そこに映像監督が入ればいいなと思います。先ほども話したように映像が消費されているし、お金もないし、どうしても夢も持ちにくいし。そういうのをとにかく変えたいんです。将来自分が死んで50〜60歳下のまだ見ぬ子供達が将来この仕事をすごいって思ってやりたいと感じてくれたらいいなと思います。

山田健人/Kento Yamada

1992年生まれ。東京都出身。映像作家 / VJ。独学で映像を学び、2015年よりフリーランスとして数々の映像作品を生み出す。同年バンドyahyelに加入しVJとして活動。
Instagram @dutch_tokyo

ILLUSTRATION: TAKURO TAKAGI @takurotakagi

INTERVIEW&EDIT: KAHO FUKUDA

DESIGN: AZUSA TSUBOTA

CODING: JUN OKUZAWA

 



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