CULTURE
2025.12.26
2025年をふり返る。ドキュメンタリー『Black Box Diaries』での感動体験と、もう一度観たいと思う日本映画たち
劇場で観てほしいという希望はありつつも、フィルムからデジタルへ、ビデオから配信へ、時代とともに映画を観る方法も環境も変化している。いろいろな選択肢があっていいと思います。
そんな中で、先日、映画館で映画を観るということは、こういうことなんだよなと感動した出来事がありました。映像ジャーナリスト・伊藤詩織監督によるドキュメンタリー『Black Box Diaries』を観たときのことです。
この映画は、伊藤監督自身が過去に受けた性暴力について調査し、彼女自身が傷ついた者としてカメラの前に立ち、記録していく。ドキュメンタリーの中でも特殊な作りになっている作品です。様々な意見が飛び交っている映画でもありますが、この映画が作られたことで性被害救済制度の改善の一歩になってほしい、そんな希望を託したくなる1本でした。
感動した出来事というのは『Black Box Diaries』鑑賞時、エンドロールが流れるタイミングでのことでした。自然と拍手が湧き上がったのです。
映画祭や舞台挨拶などでの拍手は珍しくないのですが、一般の上映で、しかも劇場全体から自発的に拍手が湧くというのは、めったにない。その日の拍手の音は、感動と共感と連帯の音に聞こえました。おそらく『Black Box Diaries』を観た日のことは、一生忘れないと思います。
映画館で映画を観るということは、その映画を観たいと思った人たちが、わざわざ足を運んで、同じ空間で同じ時間を過ごす。鑑賞の記憶だけでなく、人生のひとつの出来事として記憶に刻まれる。そこが映画館で観た映画とそうでない映画の違いでもあります。
もちろん、映画から受け取るものは、どんな方法で鑑賞したとしても変わらないはずですから、年末年始は、映画館でもお家でもじゃんじゃん映画を観てほしいです。
すっかり前置きが長くなってしまいました。2025年は、邦画が豊作の年ということもあり、このCINEMAページでもたくさんの邦画をピックアップ。一年をふり返るこの回では、改めておすすめしたい6本を選びました(※公開順です)。
『花まんま』
『か「」く「」し「」ご「」と「』
『フロントライン』
『宝島』
『次元を超える』
『愚か者の身分』
『花まんま』と『か「」く「」し「」ご「」と「』は、誰かを想う気持ちをこんなふうに表現するのかと驚かされましたし、リアルな日常の中にファンタジーを忍ばせる手法も良かった。観終わった後、なんとも温かい気持ちにつつまれる映画です。
『フロントライン』『宝島』『愚か者の身分』は、私たちがこれまで生きてきた歴史、いま生きている世の中についてを知る、日本社会について深く考えさせられる映画でした。扱っている題材は、日本初の新型コロナウイルスの集団感染、戦後のアメリカ統治下の沖縄、現代の闇ビジネス——それぞれ題材は異なりますが、映画を通して自分が生きている世界を見つめるきっかけになると思います。
『次元を超える』は、孤高の修行者を窪塚洋介、謎の暗殺者を松田龍平が演じているのですが、彼らがたどり着くのが次元を超えた鏡の洞窟。次元を超えるってそういうこと? と、いろいろ想像を超えてくる映画です。
2025年は、この6本を含めた新作47本を紹介。すでに配信で観られる作品もあるので、何を観ようか迷ったときの参考にしてください。2026年も素敵な映画との出合いがありますように。
Rie Shintani













