CULTURE
3人の女優が誘う記憶の物語『遠い山なみの光』
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『遠い山なみの光』
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そもそも物語とは、作者が人物・事件などについて他人に語る形で記述した散文の文学作品のことですが、この“他人に語る”という点に着目してみると、ミステリーは日常の中にあふれているのだとあらためて気づかされます。
例えば、語り手が自身のことを振り返って誰かに語る場合、事実の中にはあやふやな記憶もある、もしかすると多少の嘘もある、当事者ではない限り本当のことはわからないものです。
『遠い山なみの光』はノーベル賞受賞作家カズオ・イシグロの原作小説の映画化で、監督・脚本・編集は『愚行録』『蜜蜂と遠雷』『ある男』などを代表作に持つ石川慶がつとめます。この組み合わせだけでも心が躍りますが、さらに広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊が共演とくれば、もう「観るしかないよね」となるのですが、何がすごいかって、物語に夢中にさせながらここぞという所で、先に挙げた物語の本質を巧みに突いてくるのです。
1982年イギリス。悦子(吉田羊)は、作家を目指す娘のニキにせがまれて、1952年の長崎での自分自身(悦子/広瀬すず)の記憶を語り始めます。それは、原爆を経験した後のこと、佐知子(二階堂ふみ)とその幼い娘と出会ったひと夏の出来事、イギリスへ渡ったこと……。しかし、悦子が語るそれらの物語には嘘が隠されていました。
長崎の物語は悦子の記憶から紡がれている、ということを頭の片隅に置いて映画を観ることで、ほんの微かな違和感を察知することができます。そうすることで、真実に触れたとき──点と点がつながった時に、私たちは大きく心を揺さぶられるのです。
今よりずっと女性が生きにくかった時代に、悦子と佐知子はどう生きたのか。人は記憶と共にどう生きていけばいいのか。ヒューマンミステリーとしての面白さに加え、今を生きる人への気づきもある。3人の女たちの切なくも美しい、そして力強さを描いた映画です。
| ミステリー度 |
★★★★☆
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| 歴史を知る度 |
★★★☆☆
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| ファッション度 |
★★★★☆
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原作
カズオ・イシグロ/小野寺健訳『遠い山なみの光』(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集
石川慶
出演
広瀬すず
二階堂ふみ
吉田羊
カミラ・アイコ
柴田理恵
渡辺大知
鈴木碧桜
松下洸平
三浦友和
配給
ギャガ
2025年9月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
Ⓒ2025 A Pale View of Hills Film Partners
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