CULTURE
想像を超えてくる驚きと共感『サブスタンス』
『サブスタンス』
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人によって「美」の定義は異なりますが、世の中には、これが「美」だという押しつけ、いえ提案があふれています。「外見じゃない中身だ」「美しさは内面からにじみ出るものだ」と言われる一方で、雑誌でもウェブでもファッションページを開けば、これが美しさの正解ですと言わんばかりに、選ばれし端正な容姿の持ち主が写っている。
その姿に、憧れを持ったり、なんて美しいんだろう! と感動したり、プラスの気持ちに浸れるならいいのですが、比較したり、美はこうあるべきと偏向した考えを持ったりすると、やっかいです。そこで紹介したいのが映画『サブスタンス』。
主人公は、かつて人気女優だったエリザベス(デミ・ムーア)、50歳。容姿の衰えから仕事が激減し、再生医療“サブスタンス”に手を出してしまいます。そして若さと美貌を手にし、スー(マーガレット・クアリー)として再びスターダムを駆け上がっていきますが、若さと美貌を保つためにはルールがある。それは、7日間ずつ入れ替わること。けれど、絶対守らなければならないルールを、スーが破ってしまい……。
エリザベスとスーの入れ替わり、その方法が何とも奇抜で、おそらく優に想像を超えてきます。そもそも再生医療の“再生”がぶっ飛んでいる。これはもう、ある種のホラーでありコメディとも言えますが、それでも本質を突いてくる、ブレずに突いてくる。美しさとは一体何なのか? という問いかけだけでなく、年齢を重ねていくことは平等であることやルッキズムに対する警鐘など、強烈な映像に負けないほどの強烈なメッセージがあるのです。
コラリー・ファルジャ監督のコメントを引用します。
「この作品を描くにあたり、過剰さを追求することで、私の内に存在する“モンスター”を解き放ちたいと思いました。そのモンスターとは、隠しなさいと教え込まれてきた自分の一部のことです。それは、不完全で、老いつつあり、変化を遂げている自分の一部であり、その姿、行動、考え方は、女性である自分にとって不適切だと思い込んできたソレです。ソレは、女性たちをあまりにも長い間抑制してきた束縛から解放するために、女性の肉体を破壊して戯れます。長い間、自分を抑えるようにと押さえつけられてきたから、その真逆のことをするのです。社会が、暗黙のうちに従えと教えてきたルールを用いて女性たちを破壊してきたのと同じ方法で、からだを虐げ、あざ笑い、破壊します。そのため、非常に生々しい描写を用いました。」
確かに、過剰です、生々しいです。グロテスクな描写が苦手な人は、ある程度覚悟が必要な映画だと思いますが、そこまで振り切って描くからこその解放感があるのも事実で──。文字だけでは足りない、写真や絵でも足りない、音声だけでも足りない、映画だからこそ体験できるものが『サブスタンス』にある。これぞ映画だなぁと思う一本です。
共感度 |
★★★★☆
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驚嘆度 |
★★★★★
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狂気度 |
★★★★★
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監督・脚本
コラリー・ファルジャ
出演
デミ・ムーア
マーガレット・クアリー
デニス・クエイド
配給
ギャガ
2025年5月16日(金)より公開
Ⓒ2024 UNIVERSAL STUDIOS
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