HOME > It's Work Time vol.01 NYLON JAPAN編集長 戸川貴詞 2/4

若者達が
次のスタンダードになるはず

―では、次の質問ですが、常に注目しているものはありますか?

世界中の若者達の動きですね。今だとSNS。別にファッションということだけではなくて、若い人達が何を考えているんだろうと、毎日動向を追い続けています。

―それはそこにビジネスの可能性が見えるからですか?

ビジネスというか、それが次のスタンダードになるはずだと思っているからです。あえてネガティヴな表現をすれば、今存在するものっていうのはいつか必ず足枷になる。なので、さっきも言った固執しないということと同じなんですが、そこにこだわりすぎると、未来を見誤ってしまうと思っているので。自分が正しいと思っていることなんて、明日は正しくないかもしれないんですよ。自分が今日作ったものを明日には壊さないといけないみたいな、常にそういうことだと思うんです。なので、自分の今持ってる考えよりも、特に10代の人達、これから世に出てくるような人達の頭のなかはどうなっているんだろうと追い続けているんです。ただ、それはほぼSNSのなかだけなので、それが全てではないしフェイクももちろんあるでしょうけど、何がフェイクで何がリアルかということもひっくるめて、新しい動きだと思って見ていますね。

―では今注目している人物やジャンルはありますか?

それは特にないです。興味が湧けば調べたり勉強したりはしますが、それは新しく起こったこととは限らないので。今まで自分が生きてきたなかで自分の視野的に見えなかったものなんて山ほどあるし、むしろそっちの方が世のなかには多い。でも、そういう過去のことに興味が湧いたきっかけで、改めて勉強することが本当にたくさんあるので、なぜ今まで全く興味を持たなかったんだろうと思うことがよくあります。例えるなら、とにかく子供の頃からミュージカルが嫌いで(笑)。嫌いというか40歳を過ぎるまで全く興味が湧かなかったんですよね。映画も1度も面白いと思ったことがないですし。でもある日、古いディズニー作品をたまたま観ていた時、「あれ? すごく面白いな」って突然思ったんです(笑)。今まではミュージカルの歌のシーンに対して嫌悪感を抱いていましたが、むしろ歌を聴きたいって感じるようになったんです。ストーリーはもちろんですが、結局のところミュージカルって音楽を聴いているんだと。これは自分のなかで新しい発見でした。音楽のなかには当然歌詞があってストーリーがあってというのと同じで好きなものは何回でも聴きますが、それと同じで10回でも観れてしまうんですよね。例えば『スターウォーズ』のような大好きな作品だとしても、何度も観てるといったって、1作目を10回ちゃんと観たか観ていないかというくらいなのに、比較的最近公開されたばかりの『グレイテスト・ショーマン』はもう5回くらいは観た(笑)。ただ音楽を聴きたくて、それだけで泣けてくるっていうのは本当に新しい発見でした。これはわかりやすい例の1つですが、ずっと何かに注目し続けているっていうよりは、常に注目する対象は変化しているという感じ。どういうことに世のなかの人達は心が動くのか、それまで自分にはわからなかったことがわかるようになって、自分がアップデートした感じがしますね。

―NYLONを始め、過去にはDAZED&CONFUSED、最近ではViolet(ヴァイオレット)やHighsnobiety(ハイスノバイエティ)などの海外誌を日本で展開していますが、これらの媒体を選んだ理由は?

1つは、そもそもライセンサーがインディペンデントな会社であること。コンデナスト社やハースト社、タイム社などの大手出版社ではないということが自分のなかでは条件だと思っていましたし、おそらくこういった会社に話を持ちかけたところで相手にされてないはず。会社設立当初は、僕自身もまだそんなに実績がなかったので、外から見ると“誰?”という状態だったと思うんですよ。だからそういう大手出版社が発行しているものには最初から興味がなかったというか、意味がないし無理だと思っていました。インディペンデントな会社であれば、より一緒に事業を考えられるはずだと思ったし、そのなかで感覚的にとしか言いようがないですが、ロンドンのDAZED & CONFUSED(以下デイズド)とニューヨークのNYLONが、自分が思い描いていたフィロソフィにいちばん近いことをやっているなと思っていたので話しに行ったんです。もちろん向こうが「NO」という可能性もあるなか、両社とも「YES」と承諾してくれたので、そこからスタートできました。それ以前のサラリーマン時代に様いろんな経験をしたなかで、仮に『ABC』というタイトル名の雑誌を0からスタートさせようとしても、作ったばかりの会社で社会的信用もないし僕自身のことも誰も知らないので、古い体質の出版業界では全く相手にされないと思ったんです。なので、インディペンデントな会社から、オリジナルでメジャー誌をブランディングして作っていくのには、すごく時間がかかるなと思いました。その間収益化させていくものも、何で資金を作っていくのかが難しいと感じたんです。もちろん名前がなくても売れるものを作るという可能性はあって、それを追う選択肢もありました。ただ会社的なキャッシュフローでいうと、日本の出版業界では、新規取引だと雑誌が売れたとしてもお金が入ってくるのは約半年後なんです。そういう日本の出版流通システムもあって、1万部より3万部、3万部より5万部、もっと言えば10万部売れるもの、20万部売れるものを仮に考えて作るということは、それだけ多くのの印刷費がかかってくるので、仮に売れたとしてもただキャッシュフローが悪くなるだけ。約半年分の印刷費や編集制作費が先行して必要となってくるので、とんでもない金額になってしまうんです。その印刷費や編集制作費を先行して支払うだけの資金的ベースがなければ、すぐに会社の経営は破綻してしまいます。それですぐに資金を作るとなると、比較的早く入ってくるのが広告なので、広告ビジネスに特化しようと考えました。そのためには、世界的にある程度知名度があるブランドの方が戦いやすいと思って、デイズドとNYLONのライセンスを買いに行ったんです。昨年からスタートしたHighsnobiety(以下ハイスノ)も、会社としてメンズをしばらく触ってなかったので、何かメディアをスタートさせたいと何年か前から思っていたんですが、それを自分達のオリジナルでとなると先ほど話したようにお金も人も時間もかかるし、やはり海外の会社とライセンス契約を結んだ方がスピード感もスケール感もイメージしやすかったのでそうしました。ライセンスビジネスを軸にしたのはそういう理由です。なので、うちのオリジナルはCYAN(シアン)くらいなんですよ。

―ではなぜCYANはオリジナルでスタートさせたんですか?

CYANはビューティを軸とした女性のライフスタイルを扱う雑誌なんですが、将来のことを考えると、オリジナルで作って自分達がライセンサーになった方が、ビジネス展開を広く考えられると思ったからです。世界に持っていくのもそうですし、WEBメディア、SNS、イベント、商品開発、美容室との取り組みなど、多角的なビジネス展開を行うにあたって、面白いことをより素早く考えられるということなんです。NYLONにしても当時のデイズドにしても、今のハイスノやVioletにしてもそうですが、当然本国のアプルーバルが必要なので、勝手なことはできない。それが手間というわけではもちろんないですが、ブランド認知としてのライセンスのプラス要素と、スピード感含めたマイナス要素も必ず出てくると理解していたので、いいタイミングでオリジナルブランドを1つ進めたいと思っていました。いろんな形で会社を運営してきて、縁があって5年前にオリジナルメディアを作ることができたという感じですね。まだまだこれからのメディアだとは思いますが、やっといろいろな展開が見えてきたので、これからライセンサーとしてのビジネスを考えていきたいと思ってます。

―では少し話の趣旨を変えて、率直な質問ですがプライベートは何をしていますか?

映画を観たり、本を読んだり。あとは、寝ています(笑)。

―趣味は?

車、バイクは好きだから特に目的がなくても乗っています。あとは、例えば娘とどこかに遊びに行って、というのもプライベートの1つだと思うんですけど、究極を言えば僕のプライベートではないので(笑)。もちろん、楽しいんですけどね(笑)。1人になる時間というのがなかなか取れないので、常にそういう時間が欲しいなと思っています。1人じゃないとなかなかインプットできないというか、プライベートでも誰かと一緒にいると結局アウトプットしているんですよ。楽しいとか楽しくないとかという話ではなくて、1人でボケーっとしている時間が必要なんです。今から好きなことを1年間していいと言われたら間違いなく世界旅行ですね。それ以外ないと思います。なんなら宇宙へ行きたいとも思っています。

Takashi Togawa/戸川貴詞

1967年生まれ、長崎県出身。明治学院大学卒。

2001年にカエルム有限会社(現・株式会社)を設立し、2004年に『NYLON JAPAN』創刊。

現在、同社代表取締役社長、『NYLON JAPAN』編集長、『SHEL’TTER』編集長などを務める。

ILLUSTRATION:PAMELA SUSTAITA

INTERVIEW:KAHO FUKUDA



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