CULTURE
この1日に現代社会の闇の根源が描かれている『アシスタント』
『アシスタント』
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このコラムを読んでいる貴方は、学生でしょうか、社会人でしょうか。どちらにしても、それぞれが身を置く環境に何か問題がなければいいのですが、現実はなかなかどうしてそうはいかない。だからこそ、今回ピックアップした『アシスタント』を観てほしいのです。
以前、『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』を紹介しました。#MeToo運動が世界に広まるきっかけとなった、ハリウッドの大物プロデューサーによる性的暴行事件をもとにした映画です。そして『アシスタント』は、もうひとつの『SHE SAID』と言える映画でもあります。
主人公はジェーン(ジュリア・ガーナー)。名門大学を卒業し、映画プロデューサーになる夢を抱き、業界の大物である会長のもとでジュニア・アシスタントとして働いています。
夢を叶えるためには、多少仕事がきつくても、理不尽なことを言われてもされても、ぐっと耐えるしかない、淡々と仕事をこなすしかない……。この映画は、架空の会社に勤めるジェーンの、ある耐えがたい一日を描いているのですが、その一日のなかで起きたこと、彼女が気づいてしまったことは、彼女の未来を変える出来事になるかもしれなくて。そこには、ハラスメントや搾取といった問題が潜んでいます。
『SHE SAID』のように大事件を追いかけるわけではないですが、ひとりのアシスタントの目線を通して映し出される些細なことは、些細なことかもしれない、けれど常態化させてはならないことであって、職場のパワハラや性的虐待を許容し蔓延させているシステムへの痛烈な告発であるのです。
監督(・脚本・製作・共同編集)のキティ・グリーンは、作品に込めたメッセージを一つのキーフレーズにまとめるのは難しいと言いながらもこう語っています。「ジュリア・ガーナーの(演じた)キャラクターは、とても複雑な状況にいます。それは周りの女性や男性も同じ。私が願っているのは、この仕組みを目の当たりにすることで観客が自分自身の役割について考えてくれること。なぜなら私たちは皆、この仕組み(システム)の一部だから」。
映画を観ながら、ジェーンの一日を一緒に経験しながら、こう考えるはずです。自分ならどうするだろうかと。その思考が、思考を諦めないことが、大切だと思うのです。
衝撃度 |
★★★★☆
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闇度 |
★★★★★
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共感度 |
★★★★☆
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監督・脚本
キティ・グリーン
出演
ジュリア・ガーナー
マシュー・マクファディン
マッケンジー・リー
配給
サンリスフィルム
6月16日(金)新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
Ⓒ2019LuminaryProductions,
LLC.AllRightsReserved.
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