CULTURE

2021.09.10

このSFサスペンス『レミニセンス』のキーワードは、記憶・映像トリック・ロマンス

『レミニセンス』

人生のなかで特別な出来事や瞬間は何年経っても鮮明に覚えているのに、日常の何気ないことは「そんなこともあったかな……」って、確実に記憶されていたとしても思い出さないことのほうが圧倒的に多い。写真、音声、文字、動画……さまざまな方法で自分に起きたことを“記録”できる時代ですが、頭のなかに刻まれる記憶というのは、改めて考えてみると不思議で複雑です。

今回ピックアップした映画『レミニセンス』は、記憶をテーマにしたSFサスペンスです。主人公のニック（ヒュー・ジャックマン）は記憶潜入エージェント。それはどんな仕事なのか──。記憶潜入用の装置を使って依頼人の記憶や潜在意識にアクセスし、その人が望む記憶、あるいは事件解決のために必要な記憶を導き出すガイドのような仕事です。

ある日、検察からの依頼で、瀕死の姿で発見された新興勢力のギャング組織の男の記憶に潜入したニックは、事件の鍵を握る女性メイ（レベッカ・ファーガソン）と出会い、ある陰謀に巻き込まれていきます。

「記憶」「SF」「サスペンス」というワードからは、難解な映画なの？って想像しますよね。しかも製作は『インセプション』『TENET テネット』で知られるクリストファー・ノーランの最強ブレイン、彼の弟ジョナサン・ノーラン。『メメント』の原案をはじめ『ダークナイト』『ダークナイトライジング』『インターステラー』の脚本も手がけている人物が仕掛けるSFサスペンスというと、やっぱり難しい映画なのね？って思ってしまう。

……ですが、監督と脚本（・製作）を手がけるのは、ジョナサン・ノーランの公私にわたるパートナー、リサ・ジョイ。女性の視点が加わることで、人間の感情、特に愛情にフォーカスした物語が描かれる。映像トリックと深層心理の世界観とラブストーリーが、なんとも絶妙なバランスで展開する。難解な映画はちょっと苦手……という人にとっても、入り込みやすい作りになっています。

また、劇中のニックとメイの会話のなかで、ギリシア神話「オルフェウスとエウリュディケの物語」が出てきますが、そのときの2人の会話を記憶にとどめておくと、この映画のラブストーリーとしての側面がより深く記憶に刻まれるはずです。ちなみに、そのシーンはめちゃくちゃロマンチックです！

サスペンス度	★★★★☆
SF度	★★★★☆
ロマンス度	★★★★☆

監督
リサ・ジョイ
(HBO ドラマ「ウエストワールド」プロデューサー)

出演
ヒュー・ジャックマン(『グレイテスト・ショーマン』『ローガン』『レ・ミゼラブル』)、レベッカ・ファーガソン( 『グレイテスト・ショーマン』『『ミッション・インポッシブル』シリーズ)、タンディ・ニュートン(「ウエストワールド」)、ダニエル・ウー(『トゥームレイダーファースト・ミッション』)

配給
ワーナー・ブラザース映画

9月17日（金）全国公開

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