CULTURE

先週からスタートしたCINEMA番外編＜お家ライフを充実させる今週のおすすめ映画＞、今週のピックアップ映画は『マイ・プライベート・アイダホ』です。

1991年の映画、約30年前の映画ですが、この映画をオススメしたい理由はいくつかあります。まずは、リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスの共演作であること。この2人が本当に美しい！　見た目の美しさはもちろんですが、公開当時21歳のリバー、27歳のキアヌ、彼らが役を通して表現するそのお芝居が美しくて、繊細で、苦しくて、強烈に記憶に刻まれている映画です。

美しさが際立って見えるのは、リバーの演じるマイクとキアヌの演じるスコット、彼らがそれぞれのアイデンティティを求めて旅をする姿を描いた青春映画のなかに、売春、同性愛、ドラッグ、近親相姦……いくつもの衝撃的なストーリーが内包されているから。特にマイクというキャラクターは、親に捨てられて男娼をしながら生きる若者で、ナルコレプシーという睡眠障害もある。そんな難しい役をリバー・フェニックスはみごとに演じていて、ヴェネツィア国際映画祭で主演男優賞を受賞しています。

マイクと同様にスコットも男娼として生きていますが、スコットはポートランド市長の息子で何不自由なく育った青年。でも彼は彼なりに悩みを抱えて生きています。生い立ちも家庭環境も対照的な2人が出会い、友だちになり、マイクの母親を探す旅に出る──。簡単に言ってしまえば、本来なら出会うはずのない2人が出会い、旅を通じて人生を模索する物語ですが、決して美談にしていないこともこの映画に惹かれる理由のひとつです。

親に求める愛情、好きになった人への抑えきれない想い、そして自分自身をどう愛するか、そういった普遍的な愛についての物語でもあり、ときには残酷にそれを突き付けてきます。また、幾度となく登場する真っ直ぐな道、どこまでも続くかのように見える1本の道は、感情を、人生を象徴しています。道＝人生で、出会う、すれ違う、並んで歩く、追いかける、ふり返る……人生というものをガス・ヴァン・サント監督はとても詩的に描いていて、その風景からマイクやスコットの心情を読みとろうとする、考えたくなる、そういう映画です。