CULTURE
癒えることのない傷を徹底的に描き、警鐘する『MELT メルト』
|
『MELT メルト』
|
|
映画の主人公の多くは何かに立ち向かい、それを乗り越えるまでの道のりが物語として描かれます。乗り越えることで、観客は勇気や希望をもらい、満足感を得られる。しかし、なんでもかんでも乗り越えられるとは限らなくて、異端的な作品もある。ベルギーから届いた『MELT メルト』は、まさにそういう映画です。
主人公はエヴァ。大人になったエヴァと13歳のエヴァ、ふたつのタイムラインを軸に、彼女に降りかかった忌まわしい過去が明らかになっていきます。13歳のエヴァに一体何が起きたのか──。
子供の無邪気さゆえの過ちでは許されないこともあって、おそらくエヴァに起きたことは、相当なショックとして映ります。目を背けたくなる痛みを目撃します。そして、彼女が過去の亡霊に立ち向かい、どうやって自分の人生をつかむのかが描かれるのですが、エヴァのトラウマを理解することは、とても難しい。それほど彼女の傷は深く、大きいのです。
もしも現実の世界からスクリーンの中に入り込むことができるのであれば、今すぐ彼女を救いに行きたい、抱きしめてあげたい……。そう思うことぐらいしかできない自分の非力さを嘆くかもしれません。でも、エヴァのような痛みを抱えている人がいることを知ること、それがせめてもの救いになる。
この映画の監督は、20年以上の俳優キャリアを持つフィーラ・バーテンス。彼女にとって監督長編デビュー作です。癒えることのない傷を徹底的に描くことで、警鐘を鳴らす。女性監督だからこそ描けた映画でもあると思います。
また、タイトルの「MELT」とは溶解の意味。物理的にあるモノが溶けること、エヴァが負った傷が溶ける=和らぐこと、そんな想いが込められているのではないかと。「面白い」という表現は当てはまらない映画ですが、どうか届くべき人に届いてほしい、そう強く願う映画です。
| 痛み度 |
★★★★★
|
| サスペンス度 |
★★★☆☆
|
| 青春度 |
★★★★☆
|
|
監督
フィーラ・バーテンス
出演
シャーロット・デ・ブリュイヌ
ローザ・マーチャント
配給
アルバトロス・フィルム
2025年7月25日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
ⒸSavage Film - PRPL - Versus Production-2023
|
RECOMMEND
2008年06月号掲載 ED_LETTER vol.47『Thanx! 4th Anniversary!』
NY救急救命のリアルを描く『アスファルト・シティ』
Metronomyが表現する、「新しい」ヴィンテージ
CULTURE NEWS
“Pitch”による初単独イベント! スペシャルな1DAYクリスマスマーケットが開催♡
家族を想いなおす4日間『兄を持ち運べるサイズに』
この機会を逃してはならない『落下の王国 4Kデジタルリマスター』