CULTURE
ミステリー映画を堪能する『悪なき殺人』
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『悪なき殺人』
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ミステリーの面白さは、点と点が繋がり、そういうことだったのね!と、徐々に謎が解かれていく、分からなかったことが分かる、そんな快感を味わうことだと思います。
今週のピックアップ映画『悪なき殺人』もミステリーです。物語は、南フランスの山岳地帯から始まります。そこで発見された、ひとりの女性の遺体──。その女性は誰なのか、なぜ殺されたのか、という謎が横たわりながらも、一見、繋がりのなさそうな人、場所、関係が次々と繋がっていくことで、殺人事件の真相が明らかになっていくのです。
しかも、ただ謎が解明されていくのではなく、その出来事を複数の人物の視点で繰り返し語り直すことで点と点が繋がってく、という仕組みです。黒澤明監督作『羅生門』を観たことがある人であれば、そういうミステリーの描き方ね!と想像できると思います。
『悪なき殺人』のドミニク・モル監督が言うには「『羅生門』では同じストーリーを3つの異なる解釈で描いていますが、この映画の5つの視点は不揃いで絡み合っていて、必ずしも同じ時間を描いているわけではありません」。たしかに、空間や時間を飛び越えたシークエンスが用意されています。寒村のようなところで起きた殺人事件なら、すぐに犯人は見つかるでしょ、あの人が怪しいでしょ、と思っていても……気づけば心地よく、えー!そういうことだったの!となる。「おみごと」って、唸っちゃうほどのストーリー構成に引き込まれていきます。
この映画に登場する人物たちは、生活する場所も環境も違う人たちですが、共通するのは孤独と愛情です。ただ、愛情といっても色々あって、彼らが抱える愛情は、秘密のある愛、求めても報われることのない愛、その愛を必死に追い求めてもがいている。そんな姿に、観る側はどこか共感してしまうのかもしれません。
フィルムノワールであり、ミステリースリラーでもあり、そしてタイトルもメインビジュアルも、なんだか小難しそうな映画に映るかもしれませんが、そのなかに共感もあるということは、愛を求めるラブストーリーでもある。普段はこういう映画を選ばない人であっても、選んで良かった!と思ってもらえる、とても面白いミステリー映画です。
| ミステリースリラー度 |
★★★★★
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| ブラックコメディ度 |
★★★☆☆
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| ラブストーリー度 |
★★★★☆
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監督
ドミニク・モル
出演
ダミアン・ボナール
ロール・カラミー
ドゥニ・メノーシェ
ナディア・テレスキウィッツ
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
配給
STAR CHANNEL MOVIES
12月3日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!
12月4日(土)デジタル公開
© 2019 Haut et Court – Razor Films Produktion – France 3 Cinema visa n° 150 076
©Jean-Claude Lother
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