CULTURE
知っているようで知らないダークファンタジー『ほんとうのピノッキオ』
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『ほんとうのピノッキオ』
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ピノッキオ──と聞いて思い浮かべるのは、有名な児童文学、チロリアンハットをかぶった可愛らしい木の人形、嘘をつくと鼻がのびる、ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌「星に願いを」……などでしょうか。そんなふうに何かしらピノッキオのことは知っている、でも肝心の物語ってどんなものだった?という人も多いと思います。
そもそもピノッキオの物語とは、イタリア人作家カルロ・コッローディが19世紀後半に発表した「ピノッキオの冒険」のこと。約240の言語に翻訳されている児童文学の金字塔です。誰もが知っているピノッキオをいまさら映画で?と思うかもしれないですが、幼い頃に読んでいても忘れてしまっていたり、あるいは知っている物語だと思い込んでしまっていたりするもの。しかもこの映画には、えっ!本当はそういう物語だったの?という意外な驚きがあるのです。
貧しい木工職人のジェペット爺さんが1本の丸太から作った人形の男の子が、命を吹き込まれたように動き出す。それがピノッキオ。もともと嘘をつくと鼻がのびる設定からやんちゃであることは想像できますが、この映画のピノッキオは、やんちゃとして括るには度が過ぎる!手をつけられないほどやんちゃで、言葉は悪いですがクソガキです。なんで嘘つくかなぁ、なんで言うこと聞けないかなぁ、「なんで?」の連続。
けれど、それは大人の立場から見た常識であって、子供の目線で世界を見ると、まして、ある日突然に木から生まれて世界を知った人形の立場になって世界を見ると、そりゃあ世界は輝いていて、興味だらけで、知らないことばかりで、はしゃいでしまうのも無理はないのかもしれません。そして広い世界に誘われて、ジェペット爺さんのところを飛び出してしまったピノッキオが、いろんな出会いを経て成長していく。その姿に感動する。
監督(・脚本)のマッテオ・ガローネはこの映画のテーマについてこう語っています。
「『ピノッキオの冒険』は貧困と社会のあり方をテーマにした物語で、人間とは何かを探求し、人生の葛藤、生きること、幸せになること、そして愛を求める苦悩を描いている。もちろん、父子の心温まる愛の物語でもある。すごく豊かで、示唆に富み、人間の特性の側面を象徴したようなさまざまな動物が登場するんだ」
深い!もうその一言に尽きます。このピノッキオの物語は、これまでのピノッキオのイメージを大きく覆す、大人にこそ響くダークファンタジー。そして、本当のピノッキオの物語です。
| 物語の発見度 |
★★★★★
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| ピノッキオの冒険度 |
★★★★☆
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| 映像の美しさ度 |
★★★★☆
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監督・共同脚本
マッテオ・ガローネ(『ゴモラ』『五日物語 -3つの王国と3人の女-』)
出演
ロベルト・ベニーニ(『ライフ・イズ・ビューティフル』)、マリーヌ・ヴァクト(『17歳』)、フェデリコ・エラピ
配給
ハピネットファントム・スタジオ
11月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ ほか 全国ロードショー
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