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SKY-HIが語る『刃牙』の魅力、
「目指すものは刃牙に詰まっている」

「The Strong is the Beautiful.」
強くあろうとする姿はかくも美しい。

漫画家板垣恵介が手掛ける人気格闘漫画『刃牙』シリーズ30周年を記念して、
大の刃牙好きとしても知られるSKY-HIを迎えたスペシャルコラボがNYLON.JPにて実現!

「競うな 持ち味をイカせッッ」、SKY-HIが『刃牙』から学んだ才能と向き合う姿。
そして、「我々が目指すものは刃牙に詰まっている」と語る、
そんな刃牙の魅力をコラボヴィジュアルと共にたっぷりとお届け!

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WHAT IS “BAKI”?

『刃牙』シリーズとは、1991年に週刊少年チャンピオンにて、連載を開始した『グラップラー刃牙』から始まる格闘マンガ。その後、1999年に『バキ』、2006年に『範馬刃牙』、2014年に『刃牙道』、2018年より最新シリーズ『バキ道』と続き、2021年9月に連載30周年を迎える。本編のほかに、人気キャラクターを主人公とする『バキ外伝 疵面』、『バキ外伝 創面』、『バキ外伝 拳刃』、『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』などスピンオフ作品も多数展開。2021年5月時点で累計発行部数8500万部を突破し、現在NETFLIXにて『バキ』『バキ 大擂台賽編』『範馬刃牙』を配信中。
『刃牙』は強くあろうと“強さ”を追い求める者たちの葛藤や、成功への道筋という過程が描かれ、勝ち負けのみにフォーカスするのではなく、自分を貫こうとしていたすべての者たちを「イカしてたァッッ」と賞賛してきた。

ーこのインタビューでは刃牙好きの方はもちろん、これから『刃牙』を知るという読者に向けても、その魅力をSKY-HIさんには思う存分に語っていただけたらなと思います! まず、そもそも『刃牙』はどんな漫画なんでしょうか?

簡単にいえば、主人公の範馬刃牙(はんまばき)が地上最強といわれる父・範馬勇次郎(はんまゆうじろう)を超えるために、いろんなキャラクターとの格闘に挑み続け、最終的には父と闘うっていうストーリーです。キャッチコピーは“史上最強の親子喧嘩”と言われています。

ー“史上最強の親子喧嘩”! 激しそうなストーリーですね……!

格闘漫画ではあるんですが、親子の関係性や強さとは何かというテーマ、そして登場するキャラクターの個性や背景など、とにかく面白いっていう言葉がチープになってしまうぐらい、本当に魅力が詰まった作品です! 『グラップラー刃牙』、『バキ』、『範馬刃牙』、『刃牙道』、『バキ道』などいろんなシリーズがあるんですが、大枠のストーリーさえおさえておけばどこから読んでも楽しめると思います。

ーそもそもSKY-HIさんが『刃牙』シリーズと出会ったのはいつ頃だったのでしょうか?

これに答えるのは結構難しいんですよね。『刃牙』って僕が物心ついたときからすでに話題になっていて、どこかのタイミングで生活の中に入ってくるようになっていたというか。中学生の時に初めて『週刊少年チャンピオン』を読んで、その連載の1つに第2部の『バキ』が連載されていたんだと思います。その時に体験した刃牙の強烈な世界観は忘れられないですね。小学生の時って誰もが『ドラゴンボール』シリーズや『スラムダンク』にハマるじゃないですか。その時のワクワク感がもう1度やってきたような気分になったんです。

ーSKY-HIさんが虜になった『刃牙』の世界観はどういったものだったのでしょうか?

作者の板垣先生の独特なタッチというのもありますが、画力がすごいですね。本当に引き込まれるパワーを持っているんですよ! 男心をくすぐられるというか。パッと1コマ見ただけで、「なんでこうなったんだろう?」とすごく興味をそそられて、その前後の話の流れも読みたくなり、そこからどんどんハマっていろんなシリーズを見るようになりましたね。

ーなるほど。SKY-HIさんが思う、『刃牙』シリーズの最大の魅力ってどんなところなんでしょうか?

そうですね、キャラクター1人ひとりにしっかりと人格が形成されているところです。『刃牙』に出てくる登場人物って、性格や信念がブレずに一貫しているんですよ。シリーズを通じて、すべてのキャラクターに愛着を持つことができるんです。たとえ悪役として描かれていても、格闘の最中で逃げてしまっても、そこには逃げる哲学や培った経験が活かされていて、すべてに人間味があるし、のちに別のシリーズで出てきてもその人間性が引き継がれていますね。

ー主人公以外のキャラクターも魅力的だということですね。

『刃牙』はストーリーのために消費されてしまうモブキャラがいないように感じるんです。今の漫画作品は特にそういう傾向が強くて、主人公以外のキャラクターすべてに人格が形成されていることで、主人公じゃないキャラクターが人気の出ることも多いじゃないですか。刃牙はその流れのはしりだったのではないかなと思っています。

ーSKY-HIさんが1番好きなキャラクターは誰ですか?

主人公の範馬刃牙が好きだと言いたいところですが、父の範馬勇次郎が好きです。もうね、本当にめちゃくちゃかわいいんですよ。

ー範馬勇次郎の見た目からすると、かなりイカツイ感じですが、かわいい!? 一体どういうことでしょうか?

やっぱり2人のストーリーですよね。息子である刃牙に、一生懸命愛情を注いでるのがわかると、かわいいんですよね。勇次郎の愛情表現ってもはや不器用なんて域は超えているんですけど、範馬家としては「これでいいんだな」という息子への接し方をしていて。作中に刃牙と勇次郎の食卓のシーンがあるんですけど、特にあそこはそういった部分を感じる素晴らしいシーンですね。

ー“食卓のシーン”とは?

範馬刃牙が父親である範馬勇次郎に食事を振る舞うんです。たったそれだけの場面なんですけど、この2人って地上最強を巡って、ずっと親子喧嘩をしていて、あまり親子らしい営みをしてこなかったんですよね。しかも範馬刃牙は人類史上最強の力を持つ高校生で、範馬勇次郎は国家権力に匹敵する強さを持っている最強の人間で。国家権力ですよ!? 2人とも普通の人と同じようには日常を過ごしてきていないんです。でもあの食卓のシーンは、「箸の使い方がなってないぞ」とか「だって教えてもらってねえもん」っていう、どこにでもいるような家族の会話が繰り広げられていて、胸があったかくなりました。

ー普通の人たちと同じような姿が垣間見えた瞬間だったんですね。

2人ともありえないくらい強いんですけど、起きる、食べる、寝る、愛する、怒るというような、人として当たり前の側面が2人にもあるよ、ということを、あの食卓シーンで描かれてるように感じました。それってやはりキャラクターの人格を丁寧に描いているからこそ、2人の人間性が伝わってきたんだと思うんです。話の展開を考えて、ほっこりとするシーンを描いたのではなく、1人の人間としてキャラクターの人格を考えていくうちに、きっと自然とあのようなシーンが生まれたのだと思います。

自分のことを誇れるオンリーワンにならないと、
ナンバーワンにもなれない

ーSKY-HIさんが『刃牙』から影響を受けている姿勢やセリフはありますか?

僕が好きな範馬勇次郎が言った「競うな 持ち味をイカせッッ」という言葉ですね。自信を持って自分のことを誇れるようなオンリーワンにならないと、ナンバーワンにもなれないと思うんです。勝利を手に入れるために、そのときの流行りやブームに乗るんじゃなくて、自分なりのアウトプットが評価されていく方が結果的にいいと思ってて、この言葉にはそれが端的にすごくよく表れているなと思います。

ーSKY-HIさんの活動にその言葉はどのような関わり方をしているのでしょうか?

僕はアーティストとして活動してきましたが、ひと昔前は、数字を出すためにその時の流行りやブームの道筋に乗ることが正義だ、というときがあったんです。そのために周りのマネジメントやレーベルが一生懸命テンプレを作って、そこに作品を乗せていくことが当たり前になっていて。でも、よく考えると、人によってアウトプットされる芸術って違うし、どの部分を切り取っていくのかもそれぞれ違う。そもそも、流行に乗せなくてもいい。そういう選択肢が世の中には多様にあるなと思って。そのことに気づいたときにこのセリフの重みが改めて理解できたんですよね。とても身近で現代的な言葉のように感じました。

ー『刃牙』シリーズは男性の読者が多いと思うのですが、女性に向けておすすめできるポイントはどこでしょうか?

『刃牙』にはいろんなところで推せる要素がたくさんありますが、「推し」っていう言葉があるじゃないですか。あの言葉の概念は『刃牙』が作ったんだということを知ってほしいですね(笑)。

ーそうなんですか!? 今でこそアイドルや漫画のキャラクターに「推し」と使うのが一般的ですが、『刃牙』から始まった説は知らなかったです。

「推し」っていう言葉が生まれるずっと前から、『刃牙』には「〇〇派」みたいなのがずっとあったんです。しかもその愛着の深さがみんなすごくて、戦いの負け際まで含めてそのキャラクターを愛している人が多いんです。過言を承知で言いますが、あれは「推し」という概念の始まりだったのかなと思いますね(笑)。さきほども少し言いましたが、『刃牙』には負け方や逃げ方まで各々のキャラクターの個性や信念が現れていて、一貫してキャラクターの人格がブレることがないんです。だからすべてのキャラクターを愛することができるんです。女性の方も読んだらきっと愛せるキャラクターができると思います。なので、ぜひ刃牙を読んでご自分の好きなキャラクターを見つけてみてください!

『刃牙』の中での“強さの定義“と
BE:FIRSTが目指しているものは近い

ー今年SKY-HIさんはご自身で主催したオーディション『THE FIRST』を経て、ボーイズグループBE:FIRSTのプロデュースをされています。“自分のまま”でいることを理念に置いているBE:FIRSTをはじめ、アーティストが自分らしく才能を開花させられる環境作りは、まさに『刃牙』の「強くあろうとする姿はかくも美しい」に通ずるのではないでしょうか?

そうですね。『刃牙』の中での“強さの定義”と、BE:FIRSTが目指しているものは近いものがあると感じています。ほかの人の才能を認められる紳士さっていうんですかね。『刃牙』って自分にはない技や考えてもいなかった戦い方が目の前で繰り広げられると、どこかそれに対して喜んでいる印象があるんですよね。自分ではない誰かが、同じフィールドで輝くのを素直に喜べるという世界が『刃牙』にはあって、BE:FIRSTはそうなれるように、その前の段階の意識共有をしてるところです。BE:FIRSTでは、サッカーの強いチームが、ノールックでパスがつながっていくように意思疎通ができるチームを目指しています。そのためにはメンバー内で「誰がテンション上がってるかな」とか「緊張してるな」とかがわかるようにならないといけない。でもそういうことが分かってくると、僕たちの仕事は本当に楽しいものになるんですよね。人のことを信じれるようになるし、才能が輝く場所があるんだってことも信じることができます。

ーお互いを認めることによって多くのものが生まれるんですね。

そうですね。ただかっこいい人たちが歌って踊れるだけではなくて、お互いの関係の美しさを見ている人たちにも信じてもらえるようなグループが生まれたと思っています。あとは、「競うな 持ち味をイカせッッ」という言葉も、BE:FIRSTの活動につながってきますね。

ー先ほど言っていた、SKY-HIさん自身が『刃牙』から影響を受けている言葉ですよね。

これはメンバーにも意識共有をしていることの1つなのですが、メンバー同士でもそうですし、ファンの方一人一人に対しても、自分には見えない時間が存在してることを忘れないでほしいんですよね。アーティストとしてステージに立っていると、お客さんがその場に降ってきたように感じることもあるんです。でもそれはとても危険なことで、「ありがとう」とか「みんな大好きだよ」と軽率に言ってしまうのはとても不誠実だと思うんです。来てくれたお客さん一人一人が、家を出て、待ち時間を過ごして、ライヴを見て、家に帰って、誰かと共有して……といったドラマをそれぞれ持っているはずなんです。だから、ほかのメンバーに対しても、お客さんに対しても、それぞれのドラマがあるってことを忘れないのは大切なことだと思います。実際の人間に対しても、それぞれ人格があることを忘れてしまいそうになるときがあるのに、『刃牙』にはそれがないのでとても美しい作品だなと感じます。キャラクターそれぞれの物語をちゃんと想像して、誠実に描く。これがどれだけ難しいことなのか、そして現実世界でもどれほど大事なことなのか、『刃牙』を読むたびに実感する姿勢ですね。

ー『刃牙』には想像力があるんですね。

そうですね。THE FIRSTの最中、オーディションの参加者に「アーティストに一番大切なものってなんですか?」って聞かれたとき、「想像力なんじゃないかな」と答えたことがあって。表現力とか思いやりとか愛とかって、想像することから生まれるので、アーティストに一番大切な資質なんじゃないかなと思います。それでいうと、主人公の範馬刃牙はアーティストっぽいですよね。想像力があって、その力でいろんなことを乗り切っている感じがあります。

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ーTHE FIRSTについても語っていただきましたが、SKY-HIさん自身も10月27日にアルバム『八面六臂(はちめんろっぴ)』を約3年ぶりにリリースされます。今回のアルバムにかけた思いなどを教えてください。

今回のアルバムは、制作していくうちに気がついたらとてもコンセプチュアルな内容になっていました。最後の2、3曲は何も決まってないままスタジオに入って作ったので、事前に考えておいた狙いとかも何もないまま制作を始めました。普段の会話とか、日常の営みから出てくる言葉で作ったんです。制作している最中は「これ大丈夫かな?」と思っていたんですけど、完成して並べてみたら、最後の曲が1番最初の曲で歌っていることに答えるようにつながっていて。結果的に自分の今までが型取られたような形になりました。

ーなぜそのような完成形になったと思いますか?

自分にとって大切な出来事が多かった1年だったからじゃないかなと思います。起業もして、アーティストとして以外の時間が増えて、人間として見られる時間が多くなったんです。そんな中で、SKY-HIがアーティストとして軸足を保てるように曲は多少無理してでも作り続けていました。社長業もプロデューサー業もアーティスト業も始めたことである以上、やり切らないとかっこ悪いので、とにかく必死に走った1年だったんです。

ー挑戦の1年だったんですね。

最近リリースや収録をした曲は“孤独”や“居場所がない”といったことについてずっと歌っていて。最後の最後にそれが救われる形で終わったので、自分の人生を感じるような作品になりました。

ーありがとうございます。では、最後にシリーズ30周年を迎えた『刃牙』にお祝いのメッセージをお願いします。

30年もの間、現役として走り続けていることがもう感服です! 自分も音楽の世界で走り続けていますが、『刃牙』にはとにかく元気をもらって、いつも励まされている部分があるので、とてもありがたい作品です。そして、僕と同じように『刃牙』に励まされている人たちが、この世の中に何人もいるかと思うと、想像を絶するエネルギーを生み出している作品なのだなと感じます。とても大好きです。いつか朽ち果てるその時まで応援しています。30周年おめでとうございます!

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『刃牙』シリーズにおいて随所に散りばめられている食事の描写。「14キロの砂糖水」や「エア夜食」など、ファンの間で語り継がれる名シーンが多い中、SKY-HIは胸があたたかくなると感じた『範馬刃牙』編の刃牙が父親である範馬勇次郎に食事を振る舞うシーンをピックアップ。

連載30周年記念 地上最強刃牙展ッ!in東京ドームシティ開催決定

www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/30th-baki-ten.html

@30th_baki_ten

日 程:2022年3月5日(土)~4月17日(日)*44日間
時 間:11:00~19:00※開催期間中無休、最終入館は閉館の30分前
会 場:東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
チケット:前売限定・限定デザインTシャツ1枚付きチケット
イープラスにて1/31まで販売中
eplus.jp/30th-baki-ten/

週刊少年チャンピオン44号『刃牙』シリーズ連載30周年特別記念号、
コミックス最新シリーズ第5部『バキ道』11巻&
衝撃スピンオフ『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』3巻、好評発売中。
新装版『範馬刃牙』1・2巻、11月8日発売。

STAFF
MODEL: SKY-HI
PHOTOGRAPHY: HIDETOSHI NARITA
STYLING: YUJI YASUMOTO
HAIR&MAKEUP: MEGUMI SHIIZU
EDIT: SAYURI SEKINE
INTERVIEW: RYO TAKAYAMA
DESIGN: AZUSA TSUBOTA